コーポレート・アイデンティティについて
この文は、年始に会社でコーポレート部門にデザインの話をするという機会が発生したため、せっかくだしコーポレート・アイデンティティ(CI)の話をしようかな、という安易な発想のもと書かれました。
わかりやすさ重視のため、学術的には不正確な表現を多用しますが、どうぞよろしくお願いします。
そもそもの話
CIの話をすると「ロゴガイドラインを守ってればいいんでしょ」みたいな話になりがちです。僕がデザイナーであるというのも悪影響してると思います。一貫したロゴやデザインを使用することは、CIをマネジメントする手段に過ぎず、本質ではありません。
CIとは
CIとはなんなのか?
CIは色々な分野で研究されていて、その研究分野ごとに少しずつ違う解釈があったりしてつらいのですが、ここでは単純に「企業の同一性」という概念のこと、として話を進めます。
もう少し崩していうと「企業の人格・立ち振る舞い・見た目・印象」のことです。雑にいうと個性です。
企業を人として考えるとわかりやすいと思います。人の個性は遺伝子と環境によって自然と作り上げられていくものですが、企業の場合は戦略的に意図的にコントロールする必要があります。
CIを構成する要素
諸説ありますが、理念・行動・シンボルの3要素が抽出できるかと思います。
理念
経営理念・企業理念・ビジョン・ミッションなどと呼ばれるものです。その企業が何を目指し、社会の中でどういう役割を担っているのか、明文化したものです。
いくつか例を。
アマゾンジャパン株式会社 地球上で最もお客様を大切にする企業であること
引用元:http://amazon-jp-newgrads.com/message
株式会社サイバーエージェント 「21世紀を代表する会社を創る」
引用元 : https://www.cyberagent.co.jp/corporate/vision/
鳥貴族 「焼鳥で世の中を明るくする」
引用元:http://www.torikizoku.co.jp/company/philosophy/
このように抽象度が高いものから具体的なものまで様々ですが、CIを考える上で最も大事な根本となる要素です。
ちなみに個人的に一番好きな企業理念は以下となります。
株式会社バーグハンバーグバーグ がんばるぞ
行動
企業内外での全ての行動のことですが、CI設計においては「働く人にこうあってほしい」という指針を作ります。これは企業文化を育てる最初の一歩となります。
この指針をもとに、企業内で働く人が行動をし、多様な価値観が混じり合い、時間をかけて社風が熟成されます。
こちらは理念に紐付いた形で、
- バリュー
- 行動指針
などを設定します。図らずも最も有名になってしまった、電通の鬼十則も行動指針の一種ですね。
企業内部への浸透を早めるために、できるだけ具体的に、数を絞って設定することが望ましく、最もマネジメントが難しいところです。
啓蒙・浸透度のチェック・見直しのサイクルを繰り返す必要があり、かつ企業のトップレベルからの強いメッセージが必要です。
シンボル
ロゴ・色などのビジュアル表現や、言葉遣いやキャッチコピーなど、雰囲気に関わるところまで含まれます。
例えばAppleのデザインは一見してAppleのものだとわかりますし、日本においては言葉使いも独特です。
MacBook Pro 指先に、さらなる才能を。
引用元:http://www.apple.com/jp/mac/
iPhone 7 これが、7。
引用元:http://www.apple.com/jp/iphone/
いさぎよさ。 これを「iPhone 7発売中!」とは書かないわけです。
これは企業としての立ち振る舞いを定めるものです。一般的にCIといえばビジュアル表現がピックアップされがちですが、あくまで一要素に過ぎません。
CIが必要なのはなぜか
ではCIが企業に必要なのかを、いくつかの観点で書いておきます。
経営戦略として
競合他社との差別化を行い、自社の価値を高めるためにCIが必要という話です。
こちらは前述のビジョン・ミッションなどが該当しますが、事業の拡大(もしくは縮小)のときにそれがCIとぶれていないのかというチェック機構となりえます。
前述の鳥貴族であれば、焼き鳥以外のものを焼き始めたら危ない、ということです。例が極端すぎますね。
企業ブランディングとして
こちらはわかりやすいです。こちらは前述のシンボルが該当し、繰り返し共通のビジュアルを使うことで、企業の認知を高めます。
リンゴのロゴ見たらApple、マクドナルドと聞けばMのマークと赤と黄色を想起するでしょう。
これは時間がかかりますし、デザインに対する一貫性と強い思いが必要です。
コミュニケーションとして
企業ブランディングとも関連しますが、企業としての立ち振る舞いを統一し続けることで、一定のイメージを定着させ、レピュテーション(長期的に構築される名声や評判)を得ることができます。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、一般的な意味で使われる「企業イメージ」として考えても良いでしょう(怒られそう)。
「堅そうな会社」 「先進的な会社」 「接客が良い会社」
このイメージは、ユーザーはもちろん、企業にも発生しています。企業が一貫した行動をとり、企業のイメージが事前にわかっていると、コミュニケーションが取りやすくなります。
人対人でも初対面は緊張する、というのと同じです。おそらく、会うたびに言ってることが違う人と一緒働きたい人は少ないので、終始一貫した行動をとるためにもCIは重要です。
他にもマーケティングの観点や、組織づくりの観点から書こうと思ったのですが、重複もあるし長くなりすぎたのでここらへんです。
まとめ
CIを考える上で大事なのは、理念・文化・シンボルであり、いわゆるビジュアル表現みたいのは手段であって目的ではありません。企業が人格をもって動けるために設計されるのがCIという話でした。
また、CI設計は間違えることが当然あるので、マネジメントが必要なものです。CIマネジメントについてはまた書きます。
それでは!