not simple

デザインと言葉の実験です

伊勢志摩サミットのロゴについて思うこと、あるいはデザインの死。

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僕はこのロゴマークを、デザインとしての好き嫌い(Feeling)、正しさ(Logic)、双方の観点から認めることができません。東京五輪のそれについては、好きではないけれど、デザインとしての正しさはまだあったと思います。東京五輪の時には選考のプロセスについて問題になっていましたが、プロセスが正しくても、アウトプットが正しくなければ意味がない。仮に世界に存在するすべてのもののデザインの品質に平均値があるとして、これはその平均値を著しく下げてしまうとすら思っています。

なぜそう思うのかというと、論点は二つあって、デザインの目的の不明瞭さとデザインとしての稚拙さがあると思っています。

デザインは手段であって、デザインが施される全てのことやものには、なにがしかの目的があるはずです(それが顕在化しているか否かは置いておいて)。以前五輪のロゴについて書いたときに、「一般公募でロゴ募集して多数決で決める」みたいな地獄のような未来を想像しましたが、それがなんでデザインにとって地獄なのかというと、その目的の部分がどうしても深堀できず、結果軽視された形になるからです。目的が明確でないデザインは、その妥当性がそもそも判断できず、結果として「あたり障りない」「わかりやすい」多数決のデザインになるか、個の主張が過度に強調された町内会のポスター(少女漫画風のイラスト入り)のような仕上がりになります。

デザインとしての稚拙さについては、いわゆるデザインの文法を学ぶ機会も少ないはずですし、しょうがないです。それは経験ある人がちゃんとカバーするべきです。要素とアイディアを守りつつ、ロゴとしての使用に耐えうるように華麗に手直ししてあげる大人のデザイン力の発揮に期待してます。

デザインそのものの品質についてはレビュー形式で語るのがわかりやすいかと思いますので、仮にデザイナーなりたての子がこのロゴマークを提出してきたとき、僕がレビューをしたらどうなるだろうか、という体裁で書きます。

デザインレビュー

  • 「志摩の海と日の丸、そして7枚の桜の花びらで、日本で開催されるサミットを表す着想はいいね。」
  • 「志摩の海をこの形状で表現したのはなぜ?いろんな国の人が来るから、もしかしたら月に見えちゃうかもしれないね。」
  • 「太陽と月の組み合わせは宗教的な意味を持つ場合があるから気をつけてね。」
  • 「日の丸に対して桜の花びらが正確に放射状に並べられてないのは意図的かな?」
  • 「日の丸の赤と海の青が隣接してる面、色がぶつかってるけど平気?」
  • 「このロゴは会場の特大パネルにだけ印刷して使うのかな?小さくしてみると、文字が読めないかもしれないよ。」
  • 「ロゴマークとロゴタイプは分けたほうがよいかもしれないね。」
  • 「G7と2016の文字間隔が均等に見えるから、繋がって見えちゃうね。」
  • 「ISEとSHIMAの間のハイフン、ちょっと上にしないと気持ち悪くない?」
  • 「G7 2016は色のついた面に収めてるのに、ISE SHIMA SUMMIT は収まってないけど大丈夫かな?」
  • 「そもそも、日の丸を使ったシンメトリーを強く感じさせるデザインだけど、タイプだけ右寄せなのはなんでだろう?」
  • 「海の部分、円が欠けている下側の曲線、ちょっとゆがんでいるように見えるけれど、意図的かな?」
  • 「G7 2016とISE-SHIMA SUMMITの文字間隔が違うのはなんでかな?」
  • 「ISE-SHIMA SUMMITの部分、ロゴタイプに白ふちはつけるのは基本的に悪手だから別の色で視認性を担保したほうが良いかもしれないね。」
  • 「左上の青い部分の先端、縮小したら見えなくなっちゃうかもしれないね、少しバランスとったほうが良いかもね。」
  • 「このロゴのモノクロは想定してるかな?ちょっと印刷してみてみようか。」
  • 「ピンクの花びらのところ、色調が他のオブジェクトとあってないから、全体の統一感が取れてないかもね。」
  • 「書体なんだろう、国によっては文化的に嫌われる書体あるから慎重にね。」
  • 「やりなおし。」

まとめ

僕はこのデザインが世にでることの責任に関して、真摯にがんばってこのロゴを作った高校生に一切のそれはなく、これを選んだ「経験者」の側に100%の責任がある、という考えです。デザインは初稿を出してからが本当の勝負。最終的にいい形に収まることを期待してます。