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デザインと言葉の実験です

クリスチャン・ボルタンスキー 「アニミタス-さざめく亡霊たち」 @東京都庭園美術館

クリスチャン・ボルタンスキーについては、大地の芸術祭のブログで偏狭的かつ愛しかない表現で書いたのですが、そのボルタンスキーの展示が東京目黒にある庭園美術館で開催されているので、それはもう最高という話をします。

その時の記事はこちら。

www.teien-art-museum.ne.jp



東京都庭園美術館について

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外観はこのような感じです。

都内では原美術館と並んで好きな美術館なのですが、もとは昭和初期に建造され朝香宮の邸宅として利用されていた建物で、内部の装飾として当時フランスで全盛だったアール・デコの様式をふんだんに使った豪奢な建築を楽しめます。

本館は土日祝日以外は内部の撮影が可能なので、ここらあたりの建築が好きな方は平日訪れることをオススメします。

現在は庭園に接した新館を渡り廊下で繋いだ形となっています。



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庭園はゆったりと広く、最高感があります。



展覧会「アニミタス-さざめく亡霊たち」

以下は新館の展示です。



「眼差し」「帰郷」

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このような透けた布に大きな目をプリントしたカーテンで、新館のギャラリー全体を迷路のように覆います。こちらの作品名は「眼差し」。



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「眼差し」と同じギャラリーの中心に山のように鎮座する「帰郷」は金色のエマージェンシー・ブランケットを大量の古着で覆ったものだそうです。

ボルタンスキーにとって、古着とは「不在」のメタファーであって、それが金で覆われて無数の表情のない眼差しが見つめているというのは

いかにもボルタンスキーらしい皮肉な表現とも言えそうです。



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ギャラリー内にはほぼ等間隔で、ボルタンスキーの表現において「生命の表現=心臓」としての「電球」がぶらさがっています。

本館2階にも、鼓動音とリンクした赤く点滅する電球を見ることができます。



「アニミタス」「ささやきの森」

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干草が敷き詰められたギャラリーに大きなディスプレイ両面に映像作品が展示されています。こちらも新館のギャラリーに展示してあります。



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こちらが「アニミタス」



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こちらが「ささやきの森」です。



前者はアタカマ砂漠、後者は豊島に設置されたものだそうです。

普通であればありえない「砂漠」「森林」「干草の香り」「風鈴の音」が共存しているところが単純に面白いので

ボルタンスキーのテーマとしての「生と死」みたいな重苦しいことは置いておいて楽しめます。


ちなみに、風鈴はこの作品の中で「魂」としてのそれで、無機物を生命や死のメタファーとして扱うのがボルタンスキーの特徴です。

大地の芸術祭でも見れますが、「干草」「電球」「扇風機」「古着」あたりがよく用いられています。



まとめ

上記の新館の展示作品ほどの派手さはありませんが

本館の展示も、建物自体に配置されたスピーカーからささやきが聞こえる「亡霊のさざめき」

2F書庫に配置された「心臓音」などの展示があり、建物の趣と相まって楽しめます。

おそらく現代アートに分類されるアーティストとしては、かなりわかりやすい部類に入ると思うので

庭園の散策がてら行ってみるのをオススメします。

なかなかの最高感でした。